ベリルは走り去った男の影に目を細め反対方向に駆け出す。

 足を進めながら男の動きを反芻した。

 よく目を見られる事はあるが、男は確かめるような素振りだったようにも思われる。

「ふうむ」

 階段の下に身を潜め、これまでの事を思い返した。

 結論からしてここは私の知っている世界ではなさそうだ。

 あまり信じたくはないが何かの拍子に次元の裂け目が出来て引き込まれたのだろうか。

 そう考えるのが妥当なようだ。

 そこまでを現実だと考えれば、

「あれはやはり魔法か」

 何を言っているのか解らなかったが男の言葉のあと、光の弾が形成された事を踏まえればあれは魔法だったという事になる。

 しかし、その魔法が私に効力を発揮しなかったのは何故だ?