殺し続ける

「君の親御さんの指のことなんだが…」
「無かったですか?」
「右の小指だけ残っていた」

俺の頬に、何か流れた。「君は<妄想>という言葉を頻繁に使うけれど…」
警官が言う。
説明しづらい…
「俺は親に文句つけられたり…そんなときに、頭の中で親を殺して怒りを押さえていたんです」

涙が止まらない

「でも、いつのまにか妄想は…現実に…なっていたんです。俺は気づかずに、親が喋る幻聴まできいて、殴られる被害妄想までして…痛くないのが不思議なんじゃない…痛い訳がなかったんだ。
なのに…親を何回も何回も殺していた…実際に…現実として…親を殺し続けていたんだ俺は…」

母さん…
俺は…

少しの間沈黙が流れた。「右の小指は…約束だった。何があっても一緒に頑張っていこうと…昔指切りをした指なんです。」
「そうか」
警官が言った。
「あいつには、ひどいことをしてしまった。父親を奪ってしまった。俺は助けられなかった。全部自己満足にすぎないんだ結局…。逆に苦しめることをした…」
警官は何も言わなかった。