「おはよー。悠歩」
眠りに落ちそうになった所に正反対の声をかけられハッ!っと目覚ます。
「ぁー。…おはよー。鈴」
同じクラスの斎川鈴が今日も朝から化粧バッチリで私を見下ろしていた。
「悠歩っていっつも寝てるよね〜」
「…鈴は,朝から元気だね〜。」
「スッピンで電車に乗れないし。」
「それは,化粧をしない私に対しての…嫌味?」
「いやいや。ほーォ。やっぱり悠歩はスッピン可愛いね〜。」
「やっぱ嫌味かぁー⁉︎」

スッピンで可愛いのは鈴の方だ。化粧だってしてるけど濃いわけじゃない。綺麗に塗られたファンデーション。上気したような丸いピンクのチーク。淡いピンクのグロス。お人形の様なぱっちりした目。[学年一の美人]と言っってもいい位可愛い。
鈴が乗ってくるのは,降りる二つ前の駅鈴が乗ってくる頃には,満員までは行かないけど,座る場所はない。
だから,鈴はいつもつり革につかまったまま他愛のない会話をする。
それが…私の日常。
前を見ると彼の周りにも同じ制服を着た男の子たちが数人立って笑あっている。
……相変わらず笑うとえくぼができる。
昔と変わってない彼の笑顔が幼く感じる