言って、しまったと思った。


いくらなんでも全くの赤の他人に怒鳴り付けてしまうとは。いくら小声だったとはいえ、イライラしていたせいか口調が強くなってしまった。


だけど。


「ぷっ。くすくす」


男の子はそんなことお構いなしに今度は笑い始めた。

「やっと怒った」


へ…?


私はぽかんとして男の子を見た。


“やっと”ってまるで、私が怒るのを待っていたみたいじゃないか?


「さっきすんごい怖い顔して自分の靴を凝視してたから」



男の子は両手の人差し指を大きな瞳の下に置いて、一気にくいっと上に引き上げた。


男の子の目がつり上がる。