お母さんが玄関前で笑って「頑張って」って見送ってくれた。


もし…もしも受からなかったらー…


その先を考えると、自然と手に力が入った。


「ねぇ、君も青山の試験受けるんだよね?」


突然前から話しかけられ、あわてて足元に向けていた顔をガバッと上げると、向かい側の席に男の子がいた。


男の子の漆黒の髪がバスの動きに合わせてさらりと揺れる。


男の子は微笑んだ。


「僕も青山受けるんだ。一緒だね」


って。