「あっ……」

弾きとんだケータイを見てさすがにヤバイと思ったのか、女生徒が手をひっこめる。

児玉くんはそれを見てため息をひとつつくと、

「あのさ。無理なもんは無理。俺、彼女一筋だから。むしろ二股なんて平気で言える人、軽蔑する」

ぴしり、と言い放った。

さっきとは違う怒りとも呆れとも言える雰囲気に、女生徒は固まった。

だがすぐに顔を赤らめ、謝りもせずに走って消えていった。

―――何だったんだ、あれ……。

走り去った方向をボーゼン、と見てしまい、児玉くんがケータイを拾いに来たことに気付かなかった。