「各務さんに好きな人がいたら、迷惑かけるっていうのはわかってたんだけどね…わかってて頼んでるから、自分勝手過ぎた。だから、辞めたいって言われたときも仕方ないと思った。
………けど……」

「けど?」

尋ねる私に、児玉くんは顔を向けた。



思わず、ドキッとするほど真剣な表情だった。


「やっぱり、各務さんにそばにいてほしい、と思った」



児玉くんの言葉に、何て返事をしたらいいかわからなかった。


二人に、沈黙が流れる。


そうしてるうちに、観覧車が止まった。

児玉くんは外を見て、

「………止まったね……」

と呟く。


つられて観覧車の外を見ると、プロジェクションマッピングが写る会場は、人がたくさん集まっている。

何だか不思議な光景だった。


「それと」

急に続きを話し出す。

「俺のバイトの件だけど、ちょっとした目的があってバイトしたくて…でも普通のところじゃ学校にバレると困るし、と思ってたら、薫の家庭教師の話が出たんだ。家族ぐるみで付き合いあったし、向こうの親も信頼できる人だから、その話が出たとき、OKした」

「二階堂さんの親がお医者さんで昔から知り合いなのは、この前も聞いたけど嘘じゃないんだったもんね」

―――これは田神くんからも聞いていた。

「うん。それで、しばらく各務さんの様子がいつもと違って……おまけに薫が学校まで来たとき、抱きつかれたのを見られて、勘違いしたのかと焦った」

「あ――……」

「だけど」

「うん」

「各務さんが俺と薫のそんな光景見て気にするはずないと思う気持ちと、………ヤキモチ妬いてくれてるのかという自意識過剰な気持ちでごちゃごちゃして……」


児玉くんの言葉に、息をのむ。


「おまけにこの前話したとき、その光景見て動揺したって言ってたから、ますます期待したんだよね、あれから……」