「……何のこと?」


低い、冷静な声。


児玉くんを知る前は淡々とした、クールなタイプだと思わせた態度だった。


「かがみんと付き合ってなかったんだろ?」

「理由を教えてくれたらよかったのに~」

「沙菜のためとはいえ、優しいね。さっすが~!」

クラスメートに囲まれた児玉くんは、静かに私に視線を送る。

その視線が、「どういうこと?」という印象を伝えてきたが、まわりにバレないよう、みんなの後方から、「話し合わせて!」の意味を込めて、手を合わせた。

それを察したのか、

「……そりゃ、どうも…」

とだけ静かに言って、自分の席に向かった。



なぜか少し、視線をそらすときに、寂しそうな目をした気がしたけど……。


もともと多くを語る人じゃないからよかった。


まわりから聞かれても、あまり余計なことは児玉くんは語らなかったから。




こうして、クラスメート達には、『私のストーカーに対して牽制するために付き合うふりをしてくれた児玉くん』という話でまとまった。


「かがみんにストーカーって、物好きだなー」

と言いやがったクラスメート達には、とりあえずアイアンクローをしておいた。

「たまにはマニアックなのがいるの!」

というと、ふとクラスメート達は井ノ上に視線を送る。


「なっ、なんだよ、俺、ストーカーまではしてねーよ!」

井ノ上がそう慌てたから、まわりは爆笑に包まれた。