いつもなら、二階堂さんの言い分だけじゃ真実がわからないから、児玉くんの話も聞いたうえで判断しようと思うんだろうけど、今の私にはそんな考えが浮かばなかった。
むしろ、もう、児玉くんと話をしたくないとも思ってしまって。
本当に付き合っている訳じゃないから、ここまで怒る必要はないんだけど。
それでも、最初にそういった事情を教えていてくれたら、二階堂さんのカムフラージュのつもりで引き受けることもできたかもしれないのに。
どうしてそれは教えてくれなかったんだろう。
児玉くんの彼女役で過ごした日々もわりと楽しかったから、よけいにつらかった。
「もう、いいや……」
ぽつり、と私はつぶやいて。
その場を立ち上った。
「え?各務さん?」
立ち上った私につられて二階堂さんも立ち上がる。
「列車の時間があるから帰ります」
一言、そう告げる。
「でも……」
「大丈夫です。二階堂さんの言いたいことは分かりました。ようは、私と児玉くんの関係を解消すればいいんですよね?」
「そうですけど…」
「児玉くんに私と話したことがばれるのもいやなんですよね?」
「はい」
「大丈夫です、私に好きな人ができたらこの関係をやめる約束でした。好きな人ができたといってやめることにしますから」
淡々と語る私。
「では、失礼します。今日の夜にでも、連絡しておきますから」
私はそういうと、二階堂さんの返事も聞かずに、乗り換えのための列車がでるホームへ歩いて行ったのだった。
