だが、

「沙菜ちゃん、樹が図書委員だから一人だろ?たまには帰ろうよ」

と何故か食い下がられる。

「いや、だからそっち二人の邪魔をする趣味はないんで」

断って横を通りすぎ、靴箱に向かう。

しかし、

「陽美ちゃん、また今度帰ろ。埋め合わせするし」

などと、一緒にいる女子に言っている。

「ちょ…何勝手なこと言ってんの?あのー、私のことはほっといていいのでよろしく!」

慌てて前半は田神くんに、後半は陽美ちゃんとやらに言ったのだが、

「いえ、私はまた今度でいいです。じゃあ」

とあっさりどこかへ行こうとする。

「ありがと陽美ちゃーん」

「ば、ばか!何あっさり見送ってんの、失礼でしょ!私は一人で帰るってば!」

田神くんに文句を言ってから、陽美ちゃんとやらを引き留めようとしたが、すでに近くにいた他の女子と合流しちゃっている。

「ほら、もうお友達といるし大丈夫だよ。さ、俺らも帰ろ」

そう言って私の手を引いていく。

「あー、もうわかった、一緒に帰るから手を離して」

と言うと、ニッコリ笑って手を離してくれた。

その笑顔に呆れたため息を一つついてから、靴を履き替える。


悪いヤツじゃないんだけど、周りの女子の目が何となくツラい。

ただでさえ、いつも児玉くんと付き合ってるってのでいたたまれない感じがするのに。


「ん?なになに?」

私の視線に気付いた田神くんが聞いてくる。

「ん~…イケメンはイケメンとつるむんだなと思って」

「何それ。てか、沙菜ちゃんが俺を誉めてくれるなんて珍しくない?」

やけにハイテンションだ。

「そう?ちゃんと誉めるとこがある人にはちゃんと誉めるけど」

「あっはっは、それじゃ今まで俺、誉めるとこなかったってこと?きびしー」