「何すんだよー」

私が頬を押さえると、

「沙菜が自分の世界に入ってるからじゃん。昨日の児玉くんとのことでも思い出してるんでしょ」

なんてちょっぴり冷やかすような顔で言ってくる。

あながち間違いじゃないから、何と言おうか悩んだが、

「んなことより、早く部活行かないと今日はダメなんじゃなかった?」

と話をそらすために時計をさした。

すると、

「うわっ、ホントだ」

「じゃあね、沙菜」

バタバタと二人は準備し、慌てて教室を出ていく。

そんな二人の後ろ姿を横目にみつつ、自分も帰る準備をする。

今日は児玉くんは図書委員の話し合いがあるとやらで、一緒には帰れないということだったので一人で帰ることになる。

いつもなら一人で帰るのもどうもないのだが。



何だか今日は寂しいような物足りないような、変な感じがした。



―――何で、そんなことを思うんだろ……。


ふとそんな疑問が沸いたが。


「おっ、沙菜ちゃん、今帰り?」


軽い感じの声でその疑問はかきけされた。


「…何だ、田神くんか、そっちこそ帰り…」

といいかけて、田神くんの後ろにかわいらしい女子がいるのに気付いた。

「あ、どうも」

とりあえずペコリと挨拶すると、相手も頭を下げてくれた。

「帰るんなら一緒に帰ろうか」

等と言うもんだから、

「アホ。一人で帰れるし、二人の邪魔はしないっての」

と、ヒラヒラ手を振りながらお断りした。