「今日は遠くまでごめんね」

私の家の最寄り駅で、児玉くんにお礼とお詫びをかねてそう言った。



あのとんでもなく甘い時間のせいで、寿命が縮むんじゃないかというくらい、ドキドキして。


そんな状態を開放してくれたのは、お母さんから頼まれていた荷物が届いた時だった。


鳴ったチャイムのおかげで我にかえって。


あわてて児玉くんから離れて荷物を取りに行き、受け取ってから一息ついた。




―――何してんだか、私……。


自分らしくないことをして、自分らしくないことを考えちゃって。

自己嫌悪に陥った。


気を取り直してアイスクリームを持って部屋に戻ると、児玉くんもいつもの児玉くんに戻っていて。

さっきの話題に触れないように、ちょっと距離を置いて座ってから、アイスクリームを食べたのだった。





「俺の方こそありがとう」

と言って、ぽんぽんと頭を撫でてくる。

「……それと、いろいろごめん……」

少し目をそらして、そう言った。

何だか、顔が赤いような気もするけど。



「ううん。また機会があったら遊びに来てね」

特に深い意味はないんだけどそう言うと、

「……だから……勘違いしそうになるから、そんな無防備に言わないで…」

と口元を隠しながら言った後、ぐいっ、と手を引っ張った。

「うわ…」

「急だったけど、家デートできて楽しかったよ、ありがとう」

耳元でささやいてから、手を離し、改札に消えていった。



残された私は。


「………これは、デートだったんでしょうか?……」


何故か敬語で一人、呟いたのだった。