ただ、名前を呼ばれただけなのに。

「…う………」

それすらもドキドキしてしまう自分が限界だった。


「うわぁぁ!」

「!?」


急に私が慌てるもんだから、ちょっと児玉くんがビックリする。

「ご、ごめん、名前、いやだった!?」

「嫌じゃないんだけど!もう、心臓がもたない!」

「え?」

「児玉くんに名前呼ばれただけなのに、アホみたいにドキドキしちゃって、もう、ワケわかんない!」

あまりの動揺に、わけのわからないことを口走る。


その様子をポカンと見ていたが、やがて私のセリフを理解したのか、頭をぽんぽんとしてくれた。

その後に、

「各務さんが俺に少しでもドキドキしてくれたなら嬉しいよ」

と、言ってまた抱き抱えられた。


「……変なの……」

ぽそりと私が呟いたが、聞こえたのか聞こえなかったのかわからなかったが、そのまま抱きしめられていた。