「何か考えてる?」

優しく、髪を撫でる児玉くんの手。

「……ううん。なんでもないよ」

「そう?むしろ考えてほしい気がするけど、もっと真剣に」

笑う児玉くんは本当に楽しそうで。

何も言えなかった。



―――おかしいよ、私。こんなふうに思っちゃうなんて。



さっき考えていた、この関係についての思い。

いままでの自分なら考えられないことだった。

女子扱いされてることが嬉しく思えちゃうなんて。


児玉くんをこんな間近で見れることが、凄く特別なことなんだと感じた。


そう思って、児玉くんを見ていると。



「………な」


児玉くんの表情が少し変わって。

かすかに、児玉くんの唇が動いた。


「え?」


聞き取れなくて聞き返すと、一瞬つまったあと。



「……沙菜」




どくん。


児玉くんが紡いだ言葉は、私の名前だった。