倉野沙樹は寿出版が発行している芸能誌「peep」の専属ジャーナリストで、今まで経済や国際関係を中心にフリーでネタを他の出版社に売り込んだりしていたが、二十五歳になった時に「peep」の編集長、波多野に記事の文才を認められ、契約社員として今の出版社に腰を据えた。


「peep」は芸能雑誌といっても、スポーツ界から政界の記事まで扱っているので一概にただのゴシップ誌とも言えない雑誌だったが、沙樹が写真を撮り記事を書き始めてからというもの「peep」の売上は好調だった。そんな雑誌に沙樹はマルチなジャンルで日々情報を追っている。


 沙樹は仕事にやりがいを感じていたが、数少ない周りの友人は皆、まったく別の世界で花のOL時代を謳歌しているようだった。自由気ままな沙樹を羨ましがったりしていたがジャーナリストは、この仕事なりに時に危険な綱渡りをする。そして、その綱から落ちてしまうこともありえる。


 父親のように―――。