澤口良美はふき出した。その拍子に床にアイライナーを落とし、まだ笑ったまま急いで拾い上げた。

「笑えるでしょ?わたしはもう良いから、もう一人の彼女さんと仲良くやって、て言ったら、急に考え込みはじめてさ」

二人はポーチに化粧道具をすべて詰め込んでカバンにしまった。

「『俺、なにもボロ出さない自信あったんだけどな』...だってさ」

それを聞いて、良美はまた笑い出す。すでに結婚し、身を固めた良美にとって、悠希の恋愛話はいいネタだ。

「やるねー。真面目に二股かける、か。ニュータイプだね」
「それで別れたのよ。 わたし悪くないでしょ?」