「虐めないで下さいよ~。塞いでも塞ぎきれないものはありやすぜ~」

「まあ、そうだな。…では案内してもらおうか」

「行くんですかい!?その村に!」

びっくりして飛び上がる千尾丸。

「なぜ驚く…?」

不愉快そうな白露の視線を避けながら、茶色い狐はぶつぶつ言った。

「だって、ねえ。旦那が休みの間に殺しが起きるなんて保証どこにもないのに…。しかも何もなかったら無駄骨でお仕置きされるのは俺…」

「案ずるな。そなたを殺しはせぬ。……まあ、八つ当たりはするだろうがな」

「物騒なこと言わないで下さいよ~!ちびりそうになりやす!」


何だかんだと、彼らの目的地は決まった。

千尾丸は獣の姿で、白露は紅い着物をはためかせながら山を駆け降りて行った。