「白良が来るなって言ってやす!」 「何を馬鹿なっ!」 本当だった。 彼女はいつの間にか片手を下げ、白露達に「待って」と押し止めるような合図を送っていた。 白露もそれに気づき、思い止まる。 「っ……愚かな!」 怒りと悔しさで歯ぎしりする。 「あの人間どもめ!殺しても殺し足りないわ!!」 吐き捨てる言葉。 亡者達に苦痛を与えても何も感じなかった白露が、白良の受ける責め苦を見て激怒する。 彼はまだ理解していない。 なぜ己がこれ程までに怒りを覚えているのか――その苛立ちの正しい訳を。