極悪な、しかしうっとりするような笑みを浮かべる白露。

彼は少女の涙をそっと舌で舐めとった。


「だだだ、旦那~!!」


我に返った千尾丸が大声を上げる。

「うるさい」

「で、でも!被衣が脱げてやす!!」

「何…?」

白露は今さら気がついた。

己が鬼の証しを見せていることに。

慌てて千尾丸が白露に被衣をバサッと被せるが、もう遅い。



「………見たか?」


一応、問う。


「え…と、角…ですか…?」

ばっちり見られたらしい。

白露は言い訳も面倒と考え、白良に正体を明かした。

「我は鬼。旅人などではなく、地獄に生きる鬼だ」

己の言葉に驚いて悲鳴を上げるとか、信じられないと馬鹿にするだろう。

そう思っていた白露。

しかし、彼女は意外にも冷静に教えた事実を受け止めていた。

「鬼ですか…。私、鬼はもっと恐くて大きいのかと思っていましたけど…白露さんみたいに綺麗な鬼もいるんですね」