「…美しいな」 「え…?」 白良は何のことかわからず、白露の顔を見る。 頬に伸びてきた彼の白い指が涙をすくった。 「そなたの不安、恐れ、悲嘆…。どれも純粋で…」 鬼の本能が疼く。 絶望的な負の感情は彼らにとって、何よりも勝る甘美な麻薬。 「きゃ…!?」 白露はいきなり白良を押し倒し、艶めかしく囁いた。 「怯えるそなたは美しい」 白良も千尾丸も、思いもしなかった展開に言葉を失った。 「悪行を犯した地獄の亡者どもよりも、そなたの純粋な心を恐怖で支配する方がよほど甘美であろうな…」