「どうしても名前で呼ばないとダメ?」

そら豆を口の中に入れた後、南方さんはあたしに視線を向けた。

「ダメです。

名字で呼んだらシカトしますから」

あたしはそう宣言した後で今度はなすの浅漬けを口に入れた。

「困ったなあ…」

あたしの宣言に南方さんは考えた。

フフ、困ってる困ってる。

男の人の困ってる顔が、あたしは好きだ。

何て言うか、あたしのことを考えてくれているんだなって感じ。

1人ほくそ笑んだあたしに、
「“文ちゃん”でどう?」

南方さんが言った。