南方さんは驚いたような顔をすると、
「えっ、どうしたの?」
と、聞いてきた。

「えっと…ちょっと、ベンチに座りたくなっちゃって」

自分でもおかしな言い訳だと思った。

と言うか、ベンチに座りたくなったってどんな理由なんだか。

「ああ、そう」

南方さんは返事をした後、
「隣いい?」

あたしの隣を指差して聞いてきた。

「いいですよ」

首を縦に振ってうなずいたあたしに、南方さんは隣に腰を下ろした。

ギシッと、ベンチはさっきよりも大きな悲鳴をあげた。