12月末
休み時間。
本を読んでいると、小枝君が突然話しかけてきた。
「しゃーるーん〜
お年玉にゲーム頂戴ーー。」
そういえば大林たちにどうしても欲しいけど金欠だ、と話していた気がする。
「こういうの好きなんでしょー?」
こういうの、とは。
……ああ。
間を置いてから思い当たり、ズレた言葉に少し笑う。
『…誕生日とは別でしょー?』
「えー、いーじゃーん。
しゃーるん金持ちだろー?」
ぶーぅと頬を膨らます小枝君。
本当にそうだったらしい。
母の誕生日…だから、随分前。
私は、誕生日プレゼントを用意したりのイベントが割と好きなんだ、と話した。
もしかしたら、俺もほしーい、なんて言い出すかな、なんて片隅で思ったことは、誰にもナイショだ。
その時はすげーっ金持ちー!とびっくりされて終わったのだけど。
小さな会話を覚えていてくれたことが嬉しくて、つい、自然に口を付いて言葉が出てしまう。
『あはは、あげてもジュースくらいだよー。』
たぶんこれは、小枝君との関わりが次に繋がるように、ここで切れないように願った私の無意識の行動だったと思う。
「えっ!!いいの!?」
小枝君と周囲の子が、思いも寄らず吃驚している。
言葉を間違ったのかな、なんて気圧されて、たぶん若干の下心も携えて、
『え…うん…。』
ついに約束をしてしまった。
班の女の子が若干引いてる気がする。
やっぱり不自然だもんな…
『でも、冬休み中だから、無理だよ。』
若干の抵抗を試みるが、すっかりその気になった小枝君はよっしゃーっとガッツポーズ。
「じゃ、冬休み明け!ねっ?」
もともと断る気の薄かった私が勝てるわけもなくて。
それでも、最後の抵抗を試みる。
『小枝君が、覚えてたら、ね?』
「うん!!絶対俺覚えてる!」
ーーきっとこれも、
小枝君が私との約束を覚えていてくれたらな、とかいう無駄な賭けだったりするのだけど。
これなら休み明けにも話しかけてくれるな、なんて思ってしまった私は、案外計算高いのかもしれない。

