片想い日記



その次の国語の授業だったと思う。


裏返して腕の下敷きになっている小枝君のプリントには、小学生の頃の写真が貼ってあるらしい。


本人曰く「全然違うから恥ずかしい」。


…正直、そう変わっているとは思えないが。


その時、突然やってきた松前が、見せろよ、と小枝君のプリントを強奪した。


いつも甘やかしてくれる小枝君が一生懸命隠すから、かえって気になったらしい。


小枝君も小枝君で正に死に物狂いの体で飛びかかって取り返す。


ムキになった2人は、とうとう机に乗り上げて揉み合いになった。


松前は、子供だ。


無邪気、と言えば聞こえはいいが、いや、実際そうだから皆も許してくれるのだろうが、もう力は幼稚園児と同じじゃない。


小枝君も、何故かこの写真はどうやっても見せたくないみたい。




ーー…このままでは、怪我をする…!



私はたまたま近くに来た小枝君の手から、ばっ!とプリントを取り上げ、


ふたつに折って近くの壁に押し付けた。


はっとして私をみる小枝君。


その目をしっかりと合わせて、


『もう誰にも見えないから。』


それだけ言うと、目を見開いたままこくこくっと頷いた。


松前もいつの間にか席に戻っている。


プリントはもう誰も取らないだろう。
一応小枝君の教科書の下に隠して置いた。


…あ、やっちゃったな。


今更ながら思って、でも思ったより上手くいったし注目も集めなかったので良しとする。



余談だが、その後班の人にだけ、と言ってこっそり見せてくれた写真は、今の小枝君となにひとつ変わらなかった。