「…それで…って…九条君?」
呆けている僕の顔を覗き込む彼女にドキリとした。
白い肌にぱっちりした二重で見られると、さすがに誰でもドキドキするはずだ。
ましてや相手は、校内の人気者の藤田蒼空ときてる。
一人でもんもんと考える僕に彼女は話しかける。
「……もしかして…引いた?」
さっきのデータのことだろうな…と思った僕は首を横に振る。
「よかったぁ…引かれちゃったらどうしようかと思った…」
ふわりと微笑む彼女は心底安心したようだった。
「でもさ、何で僕のこと知ってるの?」
素朴な疑問だった。
サッカー部ってことは、クラスメイトだし、ユニフォームを見れば分かることだろうけど。
「うーん…なんて言えばいいのかな……。私ね、中学の頃はサッカー部のマネージャーしてたの。それでついついサッカーしてる人のデータを取っちゃうっていうか…」
「へぇ…意外だな」
彼女にそんな趣味があったとは…。
「ふふ、そうかな?」
「うん…正直驚いた。でも…そしたらなんで高校ではマネージャーしなかったんだ?」
そう言うと一瞬彼女の顔が曇った気がした。
けれど、すぐに元のように微笑み「勉強との両立って難しいでしょ?」と言った。