「……ち…大地…!!」
名前を呼ばれ、はっとした直後…。
「…!?痛…!!」
僕の顔面にめり込むようにぶつかってきたボール。
「何すんだよ…!」
「何すんだよじゃねよ……今、ゲーム中…」
呆れ顔で言うのは、僕のガキの頃からの親友で同じクラスの、田代 海(たしろ うみ)。
「え……海何言ってんの…?」
「何言ってんのはお前だっつの…」
そう言われて周りを見ると、ブルーのユニフォームの上にゼッケンを着たチームメイトが笑いをこらえている。
「やべ……もしかして部活中だった…?」
たらりと嫌な汗が頬を伝う。
「お前どこまでとぼけてんだよ!?熱でもあんのか!?」
海が言った途端に周りは堪えきれなかったのか…爆笑し始めた。
「…んで笑うんだよ!?」
くわっ…と少し声を荒げるとさらに周りは大爆笑。
「だ、だって……大地先輩が熱なんて…ぷぷっ……ありえねぇ…」
「そうそう……っていうより…顔が……くくっ…」
失礼な後輩どもをキッと睨む…が。
「お前な…その顔で睨まれても怖くもなんともねえって…」
「…は?」
海が、どこから出したのか小さな鏡を手渡す。
それを受け取り自分の顔を見ると…
「…な…んじゃこりゃあぁぁぁぁぁぁ…!」
顔一面にボールの跡がくっきりついている。
「だ、大地先輩の顔……本物のサッカーボールよりボールっぽいっすよ…」
これまた後輩の、しかも幼馴染でもある大柳 誠也(おおやぎ せいや)が言う。
「誠也…お前……」
項垂れるように頭をかくんと落とす僕を海は腹を抱えて笑う。
「ま、とりあえずその顔…冷やして来いよ?な?…くくっ…」
海はまだ笑いながら僕の肩をぽんっと叩くと、「練習再開ー」と声を掛ける。
僕は練習を抜け、手洗い場へ向かった。