「えっ」
顔を上げると、凪くんが握りこぶしを私に向かって出していた。
「手、出して」
「う、うん」
私は手袋を外して、握りこぶしの下に両手を出した。
するとそっと私の手の上に、握りこぶしを開いた。
「くるみにあげる」
手のひらにのせられたものを、自分に近づけた。
「お守り.......」
それは、【合格祈願】と書かれれた薄緑色のお守りだった。
「凪くん」
凪くんはテーブルに両腕をのせて、少し前かがみになった。
「俺のうちの近くに神社があるんだけど、俺が受験する時もそのお守り買って受かったから。
くるみにもと思って。
ちゃんと合格祈っといたからな」
神社に行ってくれたなんて........
じっと手のひらのお守りを見つめた。
お守りを買ってくれたこと、
神社に合格を祈ってくれたこと、
そんな凪くんを想像したら、胸が熱くなって涙が溢れ出した。
「私のために?」
凪くんは大きく頷いた。
「待ってるからな......
くるみが俺の高校入学してくるの。
俺、待ってるから」