「ちょっと歩こう」
凪くんを見上げると、マフラーの中に鼻まで顔をうずめて、
俯いていた。
「うん」
街路樹に飾り付けられた青いイルミネーションを見ながら、駅まで歩いた。
凪くんは何も喋ってくれなくて、何かあったのかなって思ったけど、
聞くことができない。
病院のことがあってから、聞きたいことが聞けなくなってしまった。
嫌われるのが怖くて
知るのが怖くて
もっと気軽になんでも話せる仲になれたら、どんなに楽しいだろうって思った。
でも凪くんは、何度聞いても答えてくれないし、
何度も聞くと、困った顔をする。
凪くんには、私に触れて欲しくないことがある。
そう思うと、いつも言葉に詰まってしまう。
ずっと言葉を探しながらゆっくりと歩いて、駅の反対口に出て、
また歩き出した。
どこまで行くんだろう......
駅の反対口は、私の家のある側とは少し雰囲気が違って、
開けた土地に大きなショピングモールと、転々とマンションが建っている。
反対口からしばらく歩いて、ショッピングモールの手前の交差点で凪くんが立ち止まった。
青なのに、どうしたんだろう.......
立ち止まっている凪くんを隣から見上げると、
凪くんは俯いていて、マフラーの上から見える瞳が、
とても悲しげに見えた。
「凪くん?」
思い切って凪くんを呼ぶと、ハッとして顔を上げた。
「あぁ、ごめん」
信号が赤になってしまい、また青になるのを待った。



