縁側には西日が当たっていて、
凪くんがこっちを振り向いて座っている。
「おじゃましてます」
凪くんは、ははっと笑ってからお父さんの方を向いた。
「凪!これうまいから食え!くるみ!凪にお茶!」
お父さんは、いつものように縁側につまみを並べてお酒を飲んでいて、
その一皿を凪くんに勧めていた。
なっ、凪って......
「お父さん、呼び捨てにしないでよ!凪くん、断っていいからそんな、
お父さんが口つけたのなんて......」
【くるみちゃんのお父さんってなんかきったない】
お父さんは、汚いから......
お父さんを止めようと、居間に一歩入ったところで立ち止まった。
凪くんがお父さんの差し出したお皿とお箸を受け取って、
ぱくっと一口食べたから。
凪くん........
もぐもぐとした凪くんが、かわいく目を細めた。
「うまいですね、これ。めちゃめちゃうまいです」
そんな凪くんを見て、お父さんが満足気に豪快に笑い飛ばした。
「だろ!母ちゃんの料理はうまいんだよ!くるみ!早く凪にお茶!」
私は居間から出て、向かいの台所に入り、
コップにお茶を注ぐと、お盆にのせてまた居間に戻った。
お盆を持って居間に入った瞬間、縁側の光景を見てなぜか泣きそうになった。
縁側に座る、お父さんと凪くんの後ろ姿が西日に照らされていて、
凪くんが、まぶしそうにお父さんを見て笑っていて、
お父さんも凪くんの肩を叩いて笑っている。
なんだろう、この気持ち。
どうして、泣きたくなるんだろう。
私は目をこすって、胸を熱くしながら、
凪くんの元にお茶を持って行った。