カーディガンからそっと手を離すと、その手をぎゅっと握られた。
「ずっと一緒に帰るんだろ?」
「うん」
「じゃあ、明日も会えるじゃん」
凪くんの言葉にホッとして、思わず笑ってしまったら、
凪くんも笑って、またむぎゅっと頬をつねられた。
「ほら、行きな。ここから見てるから」
凪くんが繋いだ手を離して、また少し寂しくなったけど、
明日も会えると思って、また駐輪場へと歩いた。
何度振り返っても、凪くんが見ていてくれて、
駐輪場に入る手前で、また振り返って手を振ると、凪くんは何度も頷いた。
家へと自転車をこぎながら、今日のことを思い出していた。
今日一日一緒にいて、もっと凪くんを好きになった。
優しくて、本当にすごく優しくて......
凪くんに気持ちを伝えたい。
好きですって、付き合ってくださいって。
でも.......
橋を渡り、少し自転車を走らせると、古い一軒家が見えてきた。
その前で自転車から降り、小さな庭に自転車を引きながら入ると、
縁側にいつもいる......あれ、いない。
自転車のスタンドを立てて、ガラガラガラっと建て付けの悪い玄関を開けると、
お母さんが靴を履いていた。
「あぁくるみ、おかえり。
お母さん、また警察にお父さん迎えに行ってくるから」
またか。
「わかった」
お母さんは深いため息をつきながら玄関を出て、
家の脇に停めてある軽自動車に乗って出ていった。