「茜(あかね)おはよう」
廊下側一番前の席に座る、親友の茜に声をかけ、
その後ろの自分の机の上にボンとリュックを下した。
「あぁ、くるみ、おはよう」
茜とは部活も一緒だったし、
塾も一緒だから、1年からいつも一緒、
この夏休みもほとんど毎日塾で会っていた。
「今日帰りさ、ワラキチでノート買うんだけど、
くるみも一緒に付き合ってくれる?」
ワラキチとは、校門前の「笑吉屋」のこと。
なぜかうちの中学の生徒たちはみんなワラキチと呼ぶ。
「あぁ、全然いいよ」
笑吉屋は、文房具、駄菓子などが売っていて、
外の壁沿いには自販機が3つ並んでいる。
その自販機の前に向き合うように、
4つ錆びたベンチが縦に置いてあって、
だいたいいつも、隣のO高校の生徒たちがそこに集まっている。
店の中も高校生がいるから、
そのせいで私たち中学生は、なんとなく入りにくい。
でも古くて小さな店のくせに、何気に品揃いの良い笑吉屋。
ノートの種類も豊富で、文房具もかわいい。
そしてとにかく安い。
だから何か買いたい時は、
ひとりでは買いに行きづらいから、いつも二人で買いに行くようにしていた。