「『さん』いらない」



「えっ?」



さん?私が不思議そうな顔をすると、

凪さんは下を向いて、ははっと笑って、


またこっちを向いた。



「だから、『凪』でいいよ。『さん』いらない」


えええーーー!!!



「そんな.....無理です」



凪さんはまた笑った。



「敬語も禁止」




「えええー!!ほんと、無理です!」




凪さんはさらに、あはははっと笑って、またこっちを向いた。




「無理っていうな」


「だって、本当に無理です」



「じゃあ、今度敬語使ったら.......



手、繋ぐから」





えっ




手を、繋ぐ......



一気に体中の熱が顔に大集合して、頬が熱い。



「くるみ」

優しく名前を呼ばれて、凪さんの顔を見上げると、


「顔、真っ赤」


そう言って凪さんが、ははっと笑った。




「だって、凪さんが手を繋ぐなんて言うからいけないんです」




下を向いてそう言った瞬間、右手をそっと握られた。



「っ……えっ!!」




恥ずかしくなって手を離そうとしたら、


ぎゅっと強く手を引っ張られた。



「だから繋ぐって言ったじゃん」