アイスコーヒーを飲んでいる凪さんを見つめた。


ふわふわと盛られた黒髪


鼻筋の通った小さな顔


シャープな顎のライン


くりっとした大きな瞳も、


アイスコーヒーを持つ指も、


袖をまくったワイシャツから見える男らしい腕も、


全部大人っぽくて、


全部にドキドキして.......



【家まで送っていくよ】




嫌われたくないって思った。



どうしても、


凪さんにだけは、嫌われたくない。




「飲み終わった?」


私が頷くと、凪さんはすっと私から缶を取り上げて、

ゆっくりと立ち上がり、ごみ箱に捨ててくれた。


「あ、あの」


勢いよく立ち上がると、凪さんがごみ箱の前で振り返った。



「ん?」




「私.......ご、ごめんなさい!!」



私は、そこから逃げるように川の方へとダッシュした。





走って走って、高い土手の上に立ち、



はぁはぁと、呼吸を整えた。




嫌われたくないって思ったけど、


こんなことした方が、嫌われてしまうかもしれないって、

走り出してから気づいた。



でも、どうしても知られたくなかった。


私はもっと凪さんのことを知りたいけど、


私のことは、深く凪さんに知られたくない。



でも.......


もっと一緒にいたかった。


一緒に帰りたかった。


この土手の景色を凪さんの隣から見たかった。




こんな、何も言わずに凪さんを置いて走ってきちゃうなんて、


私、バカだ......



自分の馬鹿さ加減と、


どうしても家まで送ってもらうことができない自分に、


悔しくて悔しくて



涙が出た。