高校も決まり、あとは卒業式だけとなった。
帰り道、
お守りを外したリュックを背負いながら、
ふと土手沿いに植わった桜の木を見上げると、蕾がついているのが見えた。
土手から川に続く緑の中にも、点々と黄色の菜の花が見え隠れして、
もうすぐ春なんだって思った。
合格したことを、本当は凪くんにも伝えたかったけど、
もうベンチにもいないし、
わざわざ校門で待ち伏せするのもなんだし、
それに、私の合格なんて、
もう凪くんには関係ないから、伝える必要もないと思った。
朝、登校すると、
隣のO高校の校門の前に「卒業証書授与式」という立て看板が置いてあった。
......今日卒業式なんだ。
中学は明日が卒業式。
潤平さんは、今日で卒業なんだ。
そんなことを思いながら、中学の校門を通り抜けた。
今日も卒業式の予行練習。
なんでこんなに何曲も歌を歌うんだろう.....と、
心の中でぼやきながらその日を終え、
放課後、私立高校に進学を決めた茜と校門を出た。
高校の校門のところには、人だかりができていて、
なんだか盛り上がっていた。
その横で潤平さんが一人立っていて、
私に気づくと、こっちに向かって走ってきた。
「くるみちゃん、ちょっといい?」