それから



放課後、笑吉屋の前のベンチに、凪くんがいなくなった。




そのうち、違う人がそのベンチに座りだして、



複雑な気持ちになりながら、それを横目に通り過ぎていた。




これでよかったんだって何度も自分に言い聞かせて、


さみしいと思う気持ちを掻き消した。




ひとりで帰る土手、


川を見ると隣に凪くんがいないことを思い知らされて辛くなる。


地面に映る二つの影


立ち止まった橋



帰り道のどこを見ても、凪くんがいて、


いつになったら、顔を上げて帰れるだろうかって、


帰るたびに思った。



時間が経っても、


いつまでも、凪くんと一緒にいた時で心が立ち止まっていて、


凪くんは希未さんとのことを、こんな気持ちでいたんだって、


少し凪くんの気持ちがわかった気がした。



そんな簡単に好きになった人を忘れることなんてできないっていうことを、

初めて知った。


亡くなってしまったらなおさら、


忘れることなんてできないはず。



新しい道を歩いていかなくちゃいけないなんて、


私、凪くんの気持ちも知らないでなんて偉そうなこと言ってしまったんだろう。


そんなの、簡単にできるわけないよ。




私は、凪くんの気持ち何もわかってなかった。




こんなに忘れられなくて辛いなんて.......知らなかった。