「本気だよ?」
今度はちゃんと聞こえる声で、私に言った。
「美律先輩は?」
「もう、昨日別れたよ」
「私なんかじゃ、爽汰がかわいそうだよ」
ブランコのチェーンを、ぎゅっと握りしめた。
「少しの間だけだよ。噂が消えるまで」
あぁ、やっぱり。
私のこと好きで言ってたんじゃないんだね。
わかってたことなのに、なんだか悲しくなった。
そりゃあ、あんな皆の前で公開してたら付き合ってるフリでもしてないとね。
これなら、萌菜にも信じてもらえそうだし。
でも、それって爽汰を利用してることになるのかな・・?
「爽汰はいいの?」
「いいよ俺は。愛果が笑顔になってくれればいい。」
爽汰はブランコからおりて、私の目の前に立ちはだかる。
その瞬間、優しく頭をなでられた。
「・・ありがとう」

