キミの宝物



「やばいんじゃねーの?」

男子たちがひそひそと小声で話し始める。
私は伊織と顔を見合せてなにもできない状態でいた。


その瞬間、爽汰がガンッと机を蹴った。


無残に机は横に倒れて、大きな音が教室中に響き渡る。



さっきまで気の強そうにしてた子たちが、とうとう泣き出してしまった。



「愛果をいじめんなよ。くだらねぇデマ流しやがって。調子のんなよ」



いつもの爽汰じゃない。
でも、私の心の中は温かい気持ちになった。
爽汰の優しさに、胸がキュッと締め付けられた。



「・・デマじゃ、ないよ・・!」



今までだまりこくっていた、萌菜が声を荒げる。

萌菜は、唇を噛みしめながら爽汰のことを見つめた。


そして、言葉を続けた。


「私、ずっと亮介のこと好きだったのに・・。亮介は・・愛果のこと・・」


とうとう萌菜はそう言いながら泣き崩れてしまった。


でも、爽汰は表情をまったく変えずに口を開いた。



「デマだっていってんじゃん」


はぁーと、爽汰はため息をつく。
そして、ツカツカと私の目の前まで歩いて立ち止まった。