「ゴホンッ」


背後で誰かの咳ばらいが聞こえた。
後ろにいたのは、見知らぬ中年男性。
な、なんだろう……少し嫌な気が……

その男性は必要以上に私に近づいてきている。
ちょっ、このままだったら……


「!?」


思わず体が反応してしまう。
こ、こ、こ、これが世に言う…ち、痴漢!?
うわわわッ、は、は、じめてだよぉ!!

頭の中が混乱しすぎて抵抗できないまま私は苦痛に耐えていた。
唇をかみしめ声を殺していた。
や、ヤバイ………怖いッ!!


その時


「おい、ジジイ」
「!!」

頭の上で白井さんの低く冷たい声が聞こえた。


「何してんの」


白井さんの顔を見上げるといかにも不機嫌な白井さんの顔が近くに会った。
私の後ろにいる男はおしりを触る不埒な動きをやめた。


「その汚い手で触るな。警察に連行されたいか?」
「ひ、ひィ!!!」

中年男性はおかしな声をあげ隣の車両へ逃げるように向かっていった。
私は安堵の溜息をついた。

「おい」

白井さんの声が聞こえたかと思うと瞬く間に私は電車のドアに抑えつけられた。

こ、これって……壁ドン!?