その男とは。
「大丈夫?立てる?」
ショックで俯いていたゆきは、その声で顔をあげた。
心配そうに私の顔を覗き込んでいたのは。
「ユウキ…くん…!?」
ゆきは、自分に向かって差し伸べられた手を掴み、立ち上がった。
「ありがとう、ユウキくん。」
「こんな可愛い子が困ってんのに助けてあげないなんて、男じゃねえからな!」
「もお、ユウキくんってば///」
「歩けないだろ?ほら。」
ユウキくんはそう言って、背中を私の方に向け、しゃがんだ。
ん?なに…?
「はーやーくー!のれ!」
え?これって…おんぶするぜってこと!?
「あー。おんぶはさすがに恥ずかしいか。それならっ」
ユウキはひょいっと私を持ち上げた。
つまり。
お、ひ、め、さ、ま、だ、っ、こ。
「ちょちょちょちょ!!?ユウキくん!!!?」
「しょーがねえだろ、歩けねえんだから。」
「だからって…!!」
ゆきは慌てて降りようとするが、足首の痛みで上手く抵抗できない。
「じっとしてろよ。すぐ保健室まで連れてってやっから。」
なんだこいつは!恥ずかしくないのか!?天然なのか!?
いや、ちがう!笑ってる!こいつ!めっちゃニヤニヤしてる!!
Sだ!絶対Sだ!
ここで嫌がったらユウキの思い通りだと思ったゆきは、抵抗をやめた。
そのまま学校まで、何も会話を交わすことなく歩いた。いや、抱えられていた。
