鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ

バレンタインのことを思い出しながらしんみりしていたけれど、そんなことを考えても今は仕方がない。琴美が好きなものをと言ってくれたので箱の中から一つ手に取った。久しぶりに見たな。このチョコレート。


「ありがとう。いただきまーす」


口に入れるとそれだけで幸せな気分になれるチョコレート。フルーリーで働けて幸せだけれど、できるなら、チョコレートと直接携わる仕事がしたかった。


そう思うのは、もうすぐお昼休みが終わるから。嫌だ。またあの鬼上司と同じ部屋で仕事をしなくてはいけないなんて。そう考えるとふうとため息をついてしまった。




「ねぇ、お父さんのことはともかく、美晴、またやったでしょ?」



「もう、今、考えないように現実逃避してたのに。でも、琴美が知ってるってことは、怒号、琴美のところまで響いてた?」



「うん、朝からまた怒鳴られてるなって思ってた。まぁ、あんたが経理課なのが、私も理解できないけどね」


私が所属するのは、チョコレートとは無縁、尚且つ、最も苦手な計算を要する総務部経理課。私の仕事は、会社の業務に関わる出費、入金管理、請求書の作成、請求書の支払い、従業員の給料計算、税金算出。


昔から、算数、数学大嫌いだった私にとって、数字とほぼ毎日格闘しなければいけないという地獄の部署。

それだけでも苦痛だというのに。
ため息をついて、朝の出来事を振り返った。