でも、そんなことを思ったとしてもお父さんと冴子さんの結婚が決まった以上、そんな恋愛感情をいつまでも持ち続けてなんていられない。


私と課長は兄妹になる。このまま二人でいたら、その熱い視線を受け止めたら確実に諦められなくなる。「本当は、兄妹になんてなりたくない」その言葉を口にしてしまいそうになる。


「課長、ありがとうございました。もう大丈夫です。落ち着いたので帰りますね・・・」


撫でられていた手をそっと離し、ゆっくりと立ち上がることが出来た。こんな辛い恋ならしたくなかった。両天秤にかけなければいけないものがどちらも手放したくない大切な人なんて。


「俺は、最初から決めていたんだ。もうどんなことがあったとしても諦めるつもりはないって。一度諦めかけたことをこんな風にチャンスまで掴んで台無しにするつもりはない」


腕を強く引かれ、私はそのまま課長の胸になだれ込むように倒れた。そして、彼は離さないとばかりに私を強く抱きしめ、何も言わせしないとばかりに唇を重ねてきた。


「美晴、俺と結婚してくれないか」


絶対に受けることのできないプロポーズの言葉を口にして。、