鬼上司？と嘘恋から始めるスイートラブ

「佐伯、お前は俺の何を知っているんだ？確かに全くの他人ではないけれど、少なくとも上司と部下の関係以上のものはない。お前は俺の上司の部分だけで判断しているだけだろ？」


空気が変わった。さっきまで、私が一方的に怒りをぶつけているだけだったのに、今は課長のペースに変わっている。

「まあ、そう言われたらそうですけど」


ふと口をついてでた言葉は、なぜかそんな言葉。さっきまでは、絶対にありえないの一点張りだったのに、普段、怒ってばかりの課長しか知らないから、あんな風に言われると確かにそうだと頷ける。

「だったら、嘘を貫き通してみないか？」


見られているような視線を感じ、顔を上げると
射抜くような眼差しと視線が重なった。こんな『男の顔』をした課長、私は知らない。

恥ずかしくなって、視線をそらしたけれど、やっぱり見られているのが気になる。

「恥ずかしいので、あまり見ないでください」

「そうか、じゃあもっと見ていようか」

どんな表情でそんなことを言うのかと、気になったからチラッと見てみると、初めて見る笑顔に少しだけドキッとしてしまった。だからつい、こんなことまで口走ったんだ。

「課長は、私が相手で嫌じゃないんですか？」