真剣な眼差しを向けられ、言葉が出てこなかった。大好きなお父さんが胃がんかもしれない。胃がんっていうことは、最悪の場合・・・嫌だ。


そんなこと考えたくない。でも、お父さんが望んでる。お父さんが冴子さんとの結婚を望んでるんだ。


どうしたらいいんだろう。


嫌だって言いたい。でも私が、お父さんの幸せを奪ってもいいの?今、目の前で冴子さんの肩を抱くお父さんは本当に冴子さんが大事で大切だって伝わってくる。



お父さんじゃなくて、一人の男の人として冴子さんを好きなんだ。それがひしひしと伝わってくる。でも、やっと気持ちが通じ合えたのに。課長と義理の兄妹になれば、私たちは結婚どころか恋愛すらできない。



やっとやっと気持ちが通じ合えたのに。課長はどう思ってる?やっぱり、冴子さんの幸せが大事だよね。でも、でもやっぱり嫌だ。課長が、兄妹になるなんて。



「正直、まだ迷ってるよ。でも、いざ本当に胃がんだとしたなら僕の残りの時間を冴子にあげたい。美晴、ごめん。お父さんはお父さん失格だな。こんな風に美晴を傷つけてしまって。でも、僕は冴子を一人の女性として大好きなんだ。だから認めてもらえないかな?」


「私もそう思ってるの。徹を妻として支えてあげたい。そばにいたい」