鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ

「でも、それが一瞬で壊れました。幸せの絶頂から一気に地獄の始まりでした。2月に父に呼び出されたときに聞かされた言葉に絶句しました。『本家から悠貴くんとの結婚を反対された』最初は意味がわかりませんでした。本家に反対される意味が。もちろん、すぐに抗議しました。彼の父親は亡くなったわけだし、生い立ちなんて関係ない。


悠貴の人柄の良さを見て欲しいと。でも本家にはそれが通用しなかった。もう片親だからダメだとその一点張り。あげく悠貴と結婚するなら縁を切るとまで父に伝えたそうです」



「それですぐに諦めたんですか?」




こんな言葉を言いたかったわけじゃない。あたしが思っていた以上に静佳さんには大きな壁が立ちはだかってきたんだ。あたしには考えられないような高い壁。



でも、まだその壁を乗り越えられる道があるはず。どうしてそれを選ばなかったの?




「それからはずっと悩んでいました。泣いて、泣いて。そんなあたしの姿を見て父親にも言われました。頭を撫でながら何度も何もできなくてごめんと。本家の考えを今更覆すことはできないと。それでも悠貴が好きだから、別れたくなかった。言い出せなかった。父は何度も何度も本家に掛け合ってくれました。


でも聞く耳を持たない。決めていた結婚式場には私、一人でキャンセルに行きました。悠貴には内緒で。みんなが幸せになれる場所。お父さんとバージンロード歩きたかった。悠貴とここで幸せを誓いたかった」