鬼上司?と嘘恋から始めるスイートラブ

悠貴、恥ずかしくて多分出てこないわよ。会話も聞きたくなくて大音量で音楽を聴いてるに違いないわ。洗い物は手伝わせてもらい、帰る前に課長にお礼を言おう。


こっそりと課長の部屋を覗くと冴子さんの言葉通りベッドに寝そべり耳にはイヤホンを付けて背を向けた課長の姿を発見した。



「・・・美味しかったですよ。ごちそうさまでした」



聞こえないふりをしているのか声を掛けても返事がない。やっぱり照れくさいんだ。本当に可愛いな。そっとドアを閉めて帰るとするかな。



「・・・次はもう少しマシなの作る」


相変わらずあたしの顔は見ないように背を向けたままボソリと言う課長。課長があたしを見ないならあたしは課長を見つめていよう。背中に向かって返事を返した。



「期待してますよ。あっ、あたし卵はトロトロより固めのほうが好きです」



「次はチャーハンにする。そっちのが簡単だから。それとさ、そこにあるの持って帰っていいから」



本棚の上にあると言われそれが何か分からずお邪魔しますと彼の部屋の中に入る。本棚と言われたカラーボックスの中にはビッシリと並んだ少年マンガ。


部屋だけ見れば高校生の男子だと言われてもしょうがないな。そしてその上に置かれてあったのは可愛らしいパンダのキーホルダーが付いた鍵だった。