「それショコラストーン?俺、食いたい。食べたいなぁー」

課長の視線は、私が持っていた紙袋に注がれていた。食べたいって自分はいつでも食べられるはずなのに。でも、私はこんなにドキドキしているのにショコラストーンに負けたのかと思うとちょっぴり悔しい。


だけど、酔った課長は可愛さが倍増してる。その可愛さに免じてさっき買ったばかりのショコラストーンは彼にあげることに決めた。ただし、交換条件付きで。


「やった!いただきまーす」

宝石箱の中から一つ取り出してそれを口に入れる姿は本当、大人とは思えない。まるで少年のよう。

「うん、やっぱり美味い。ここだけの話、俺、チョコ食い放題だと思ってここに就職決めたんだよな。まあ今はチョコとはかけ離れたとこにいるけど」

「なんですか、それ。子どもみたい」

「だって好きなんだから、そう思うだろう。本当にうまいわ」


美味しいと幸せそうな笑みを浮かべる課長を見るとそれだけで幸せな気分になる。チョコの食べ放題なんて、どんだけ可愛いんだ。


「あっ!思い出した」


手が止まらずどんどんとなくなっていくショコラストーン。私も一つくらいは食べたいと大好きなフランボワーズのショコラを一つ口に含むと課長が大声を上げる。


「俺の彼女・・・この人だった」


そっと頭を撫でられた後、コテンと今度は私の頭を課長の肩に乗せられた。もういちいちそんなことして私を振り回さないでほしい。



「・・・悠貴さんのバカ」



私にしか聞こえない声でそっと初めて彼の名前を呟いた。