「や、やあ夏海。転校早々元気でよかった!」

「どういうこと、パパ!? ウッチー先生から聞いたんだけど、なんで私、男しかいないクラスに入ったわけ!? 貴方は一体私に何を求めてるの!?」

「ちょ、落ち着いて落ち着いて」



理事長の机に座るパパは私をなだめるために両手を上げた。

そしてソファに座るように促したけど、私はどかない。


座ると落ち着いてしまうから。

落ち着いていられるか!!!


「詳しく、事情を聞きましょうか」

「詳しくも何も、ここの学校に女子生徒はいないんだ」


―――――幻聴かしら。



「……なんて言ったの?」

「…我が校は共学だけど、実質男子校状態なんだ」



………。



「はぁあ!!??」



どういうことだクソ親父!!
か弱き可愛い娘を狼の群れにぶちこんでどうするんだ!!??

確かに早く転校したいとは言ったけど…、これはありかよ!?


沸き上がる怒りを言葉に出そうとした時、大きな咳払いが聞こえて我に返った。

振り返ると、そこには竜也くんの姿。


「あれ、竜也くん」

「失礼ですが、理事長。話がまったく読めないんですが」


話が読めない?

それは私の台詞のような。


すると、理事長は救世者を見たかのような眼差しで竜也くんを見た。


「ああ、ごめんな! とりあえず、夏海も神宮寺くんも座って。説明するから」

「説明って、まだ話は終わってない――」



身体がふわっと浮いた。

と思ったら、ソファの上に落とされた。


犯人は、竜也くん。

見上げると、なんていうか……悪魔がいた。


「…」


無言の圧力。

逆らったら…、殺されるかもしれない。


大人しく何もしないと、竜也くんも隣に座った。

そして、安心しきった顔のパパが正面のソファに座る。



「いやあ、夏海の世話を神宮寺くんに頼んでよかった! この子は昔からやんちゃで」

「いいから、説明をお願いします。こいつが理事長の娘だと言うのは察しましたので」

「あ、ああ。そうだったな」


パパは私の様子をちらっと見てから口を開いた。