理事長室には不良が案内してくれた。
(美人は授業があるから、と教室に帰っていった)

その途中、私は気になっていたことを聞こうと試みた。


「ねえ、不良さん」

「は?」


おぅっ、怖っ。


「だって、名前知らないもん」


不良は舌打ちした。

そして顔を前に向けると、呟くように言った。


「…神宮寺 竜也」

「へー。じゃあ、竜也くんね。苗字言いにくいし!」


…竜也くんはなぜか呆れたような目で見てきたけど、きっと気のせい。


「先生は、女は私だけって言ってたけど、さっきの美人さんは何?」

「明希のことか?」


へえ、明希ちゃんか…。

竜也くんの口調からすると、けっこう仲良しな感じなのかな?


どっちにしても、ここの生徒なのは間違いないね!

ウッチー先生、意外とおっちょこちょい?

それとも、私を騙して驚かそうとしたのかな――…。