今日のパンは、特別。
前々から、転校初日にはこれを食べて気合いを入れよう!と思ってた。
そのために開店前から並んで…頑張ったなぁ私…。
と、しみじみそう思いながらパンの袋を開け、かじりつこうとしたその時ーー
「っっあ!!」
慧太くんが突然大声を出したため、私の口はパンの直前で止まった。
……なんか、こっち見てる…。
慧太くんは目を大きくして、私のパンを見て固まっていた。
「な…なに?」
いちおう聞いてみると、慧太くんは私のパンを指差す。
「それ…、サン・ブレッドの限定パンでしょ!」
「え」
慧太くんの顔と、自分の持っているパンを交互に見る。
前に座った明希ちゃんと、弁当の包みを開けようとした竜也くんも、私と同じことをしていた。
「えーっと…、わかるの?」
「わかるに決まってるでしょ! 先月から売り始めた、1日限定10個のパンでしょ! 種類は曜日ごとに変わるから、好きなパンは週に一回しか食べられない。しかも、数量限定だから週1も危うい。
そのストロベリー&クランベリーブレッドは日曜日限定だから…昨日買ったね!?」
「お…おっしゃる通りです…」
……あまりの熱弁さに圧倒される。
サン・ブレッドは、私が転校前から好きなパン屋さん。
ふわふわで、味も美味しくて、なのに価格はそんなにしなくて。
学校帰りによく立ち寄ってパンを買っていた。
こっちに来てからも近所にサン・ブレッドのお店があるって知った時は感動した。
そして、いつもすぐに売り切れてしまう限定パンを今度こそ食べてやる!!と意気込んで、そして手に入れることができた。
前の高校の知り合いには限定パンのことを知ってる人はいなかったのになあ。
すぐ売れてしまうため、熱狂的(というのかな)なサン・ブレッドファンくらいにしか知られてなかったこのパン。
それを、パンの形だけで種類と味を判断できた慧太くんは……



