何の曲かはわからないけど…すごい素敵。
きっとこれは、曲がすごいだけなんじゃない。
奏者の力もある。
引き込まれて、聞き入ってしまう。
すると、明希ちゃんは音楽室のドアを開いた。
曲がぴたっと止まる。
「ちょっとー。学校に来たならちゃんと教室に来なさいよ」
私は明希ちゃんの後ろから顔を出した。
ピアノが陰になり、奏者の姿は見えなかった。
「明希こそ、なんで教室にいないんだよ」
「アタシは、転校生ちゃんの案内中~」
「転校生?」
彼も私と同じように、ピアノから顔を出した。
―――目を奪われた。
綺麗で整った顔が、そこにはあった。
柔らかそうなくるくるふわふわの髪に、ぬいぐるみのような大きな瞳。
それを無視するかのような小さい顔と華奢な首。
「び…、びしょうねん…」
そう。
美少年だった。



